川尻筆 -かわじりふで-

一人の職人が全工程を担う「練り混ぜ」技法で しなやかな切っ先を持つ一点物の高級筆を生み出す

生産地

広島県呉市川尻町

歴史的経緯と地域性・特色

川尻筆の起こりは、江戸時代末期に、兵庫県の有馬から筆を仕入れて販売していた菊谷三蔵が、農家の副業として筆づくりを勧めたことにある。この勧めを受け、有馬で筆の製法を学んだ上野八重吉が、帰郷後に島根県の出雲地方から職人を雇い1859年に製作した筆が川尻筆の起源とされている。

当時の出雲の筆づくりは、「練り混ぜ」という毛混ぜの技法を用いており、川尻筆は今でも「練り混ぜ」技法による筆づくりが主流である。この技法は、大量生産には不向きだが、高品質で高級な筆を作るのに適しており、川尻筆は、「練り混ぜ」技法により全工程を一人の職人が作る一点物の高級筆として知られている。

明治時代に入ると、学校教育制度が整い筆への需要が増大する中、1892年に毛筆軸彫刻用の三角刀が考案され、1903年には全国に先駆けて法人組織の会社が設立されるなど、後発ながらその発展が同業者から注目される産地となっていった。その後、明治時代末期から大正時代・戦前期にかけて川尻筆は最盛期を迎え、戦後も現在まで高級筆の産地として全国的に知られており、全国シェアは熊野筆(広島県熊野町)に次ぐものとなっている。

セールスポイント

熊野筆は職人の分業体制で作るが、川尻筆は「練り混ぜ」という毛混ぜの技法が主流で、全工程を一人の職人が担う。一品一品を職人が匠の技で作る高品質の筆は、京筆の流れを汲むしなやかな切っ先を持ち、草書・かな・日本画の精密画等に適している。

指定、認定等

国指定伝統的工芸品(2004 年)、中小企業庁産地概況調査対象産地

生産者組合/主な生産者

  • 川尻毛筆事業協同組合
  • 上野文盛堂本店、叶堂、㈲玉史堂、住田文玉堂、㈱坪川毛筆刷毛製作所、土井毛筆製造、㈱文志堂、文進堂畑製筆所、湊毛筆製作所、㈱やまき筆菊壽堂

主な販売店等

関連博物館・展示施設等

呉市川尻筆づくり資料館

住所 広島県呉市川尻町板休5502-37
電話 0823-87-2390
営業時間 9:00~17:00
定休日 無休
料金 無料
体験 なし
URL http://www.norosan.or.jp/kanko/shiryo.html

参考資料

関連記事

  1. 雲州算盤 -うんしゅうそろばん-

  2. 石州和紙 -せきしゅうわし-

  3. 石見焼 -いわみやき-

  4. 熊野筆 -くまのふで-

  5. 勝山竹細工 -かつやまたけざいく-

  6. 備前焼 -びぜんやき-